今月の言葉

今月の言葉(11月)第172回 「悩む力」

 現代を表す象徴的な言葉に「グローバリゼーション」があります。昨今の情報技術、特にインターネットの普及により、私たちは様々な情報を検索したり不特定多数の人びとに情報を発信するなど、日常生活を取り巻く多種多様な情報が国境を意識することなく自由に行き交うことができるようになりました。約半世紀前1964年のOECD勧告により実施された外貨規制の緩和措置以前は、海外渡航さえ大幅に制限されていた状況からすると、当時の日本では到底考えられなかった便利かつ自由な社会が現実のものとなっています。

「自由な社会は幸福か?」
この問いが、本稿のタイトルである政治学者姜 尚中氏の著書「悩む力」を手に取った動機です。同氏は、在日であるというアイデンティティゆえに若くから様々な悩みを経験した人物です。同氏の体験した苦悩は、形や内容は違えども、私自身を含む多くの人々にとって参考になる体験であり、しかも人間の本質や人生の意味を考えることは非常に難しく、時には生や死と向き合うことも必要とされる重要な問いかけです。

 自由な社会とは、物事の判断を個人が自由に選択することができる社会です。
私たちの人生は、日々「選択」の連続です。選択とは直面した課題をいかに解決し乗り越えるかということです。そして、乗り越えるために必要なのは何かを信じることです。他者に依存するのではなく、自分を信じることでしか壁を超えることは到底できません。選択するのは自分自身なのですから。
 また、同氏は「生や死自体に意味はない。しかし、生きることの意味を確信しているかどうかで人間力は絶対的に変わってくる」と言及しています。

 「あなたは本当に真面目なんですか」この問は夏目漱石著「こころ」からの引用ですが、真面目さが「悩む力」の源泉になると思います。
 不確実性が蔓延したこの現代社会を価値あるものにするのは、自分自身であり、真面目に考え抜き、悩んで突き抜けることがこの世の中を生き抜く原動力になると同時に、悔いのない人生を送る方法のひとつなのではないでしょうか。
   
(文責:小泉 薫)


  

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