今月の言葉

今月の言葉(10月)第159回 「相手とつながる」

 少し前の話になるが、ある女性国会議員が自分の秘書に対して、鬼と化し罵声を浴びせる状況がニュースとなって全国を走った。“違うだろー、違うだろー、このハゲー”と。
しかし、これと同じようなことが我々の中でも日常茶飯事に起きているのではないか。
 誰もが持っている自分の主義主張、価値観、考え方、自分中心の自我、エゴイズム…、これらは大変強い力を発揮し、自分の正当性を主張する。
(身勝手な強盗や殺人を犯した極悪人でさえ、自分の正当性を主張する。ましてや我々のように善良な者にとっては言わずもがなである)
 人それぞれ各人が持っている自分の正当性が、お互いに合致する場合は問題にならないが、異なる場合はものすごい反発・反抗・怒りになって現れ、自他の対立を生じる。これが喧嘩、いがみ合い、憎しみ、殺し合いまでに高まってしまう。世の中で起きている対立はまさにこの類いである。

 我々の家庭でも仕事場においても、意見の違いや考え方の相違でお互いに自分の正当性を主張しあい夫婦喧嘩・親子喧嘩・仲間同士や上司部下とのいがみ合い・言い争いが絶えず、その結果、離婚・退職等となってあらわれる。特に職場においては、上司は部下を従属的に考えがちになり、上司の自我・エゴを命令的に押し通す。部下は部下で、自分の自我・エゴを持ち、上司を敵視し猛烈な反抗・反発・抵抗を繰り返す。又、部下は立場上弱いので自分の有利となるよう自分の正当性を周囲に広げ、自分の仲間に同意を求め集合する。共通のビジョン・理念は度外視され、分裂が起こりバラバラ状態となり、結果として成果低迷に陥る。

 海面はものすごい荒波でも、海底は静まり返った穏やかな状態である。同じ海水でありながら二面性を持っている。我々一人一人の人間も表面は自分の正当性(正しさ)を持った自我・エゴの固まりであるが、その人の深い深い心底にあるものは、人間を本来の人間たらしめる真の自己があると思う。自我・エゴには個人差があるが、真の自己には個人差がなく、誰にとっても同じものであると、私は思っている。例えば、親が子を思う心のように相手を思いやる、感謝する、サポートする、幸せになってもらいたい、成功してもらいたい、成長してもらいたい…と。

 真の自己を自分のものにするには、先ず自分の正当性・自己中心のエゴイズム・自我というものにこだわらず、とらわれず、執着せず、手放し、相手の正当性をニュートラルに一旦認め受容し、包み込み相手と同じモノサシを持って自分の外側の世界を見てみることが大切なポイントである。その為には、相手の正当性を聞きながら、“なるほど、そうだね、そうなんだ、そんなこともあるんだ、色々な考え方があるね…”というような言葉を発しながら、人間本来の持っている自己のこころと相手のこころとのつながりを持つことが何よりも肝心である。 正当性と正当性のぶつかり合いは、結果的に相互の敗北となろう。

(文責:高良 高)

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