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論語と経営(17)

『士は以て(こう)()ならざるべからず。任重くして道遠し。仁以て己が任となす。(また)重からずや。死して(のち)()む。亦遠からずや』
(現代訳:道に志あるものは心が広くて力が強くなければならない。その負うべき荷物は重くて行くべき道は遠いのであるから、こころの狭く力の弱い者の堪えられることではない。なぜかというに、志あるものはあらゆる善行を兼ねた仁というものを己の負うべき荷物としているのであるから、荷が重いのである。この仁という重荷を死ぬまで負っていくのであるから、道が遠いのである)

 徳川家康の遺訓に「人の一生は重荷を負って遠き道を行くが如し。」があります。
誰しも山あり谷ありの人生があり、自己の役割や責任を思うと、ため息がでるほど辛く重く感じるものです。青春時代において夢を膨らませて未来を創造するといった勢いは、年を重ねるにしたがってしぼみ、重い荷物のみがどっしりと両肩にかかっている気がします。皆、年を重ねるにしたがい同じように感じるものでしょうか。
家康はこの遺訓のなかで「堪忍は無事長久の基」として、人生において堪えていくことの大切さを述べています。

 この論語の一節にある「弘毅」の「弘」はひろく大きい意であり、「毅」はつよい意味ですから、志あるものは心が広く強くなくてはなりません。しかも志あるものは、その果たすべき任務が重く簡単には成就できないからこそやりがいがあり、一生かけて努力していかなければならないことだと思うのです。たとえどのような仕事においても自分自身の想いと縁があって就いたものであって、これをおろそかにしてはならないのであり、またうまく成就しないからといって他人の責にしてはならないのです。なぜなら仕事は自分の生計や夢・望みのためでもあると同時に、組織や社会に役立つためにあるからです。

 そこには人と人とのつながり、社会と自分との大切なつながりが網の目のごとく張り巡らされており、そのつながりを無駄にせず、我慢づよく育てていかなければなりません。自分の好みやこだわり、私利私欲で判断すると人間関係や組織、社会にまでよくない影響を及ぼします。 自分は何のためにこの仕事に就いているのか、自分の任務・役割は何か、組織や社会にどのような貢献をすべきかなど、よく考えて、「弘毅」を胸にしっかりと抱き、堪忍して職責を尽くしていくことが大切だと思います。

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