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論語と経営(16)

 孔子の弟子がある町の代官を務めていたころ、孔子がその弟子に「立派な部下が見つかったかね」と尋ねたところ、その弟子は『はい、(めつ)(めい)という容貌は醜いですが徳行の優れた人物が見つかりました。この男は近道やわき道を通ることをせず、公務以外の事で私邸にたずねてくるようなこともしません』と答えたという。『行くに径に由らず』という言葉はこの時のものです。

 人間は功を急ぐがため、近道やわき道を通って行きたがるものですが、この滅明という男は小さな近道やわき道を通らないところから、常に正しい道に従って行動し、小事を見たり速成を欲したりすることがないといえるのです。また公事でなければ代官に面会をしないところからも、自ら守る所があり、己をまげてまで媚びへつらうような下心や私心のないことがわかるといわれます。

 一方人を採用または評価する場合、容貌や外見で判断しがちですが、決してそうであってはなりません。とかく容貌が醜いと自分の心や気分に影響して遠ざけたくなるものです。しかし、日常本来のあるべき姿やあるべき将来を見ず、目の前の好き嫌いや利得で判断すると、大きな間違えのもとになり長続きするものではありません。確かに人の奥行きを観る眼が養われていない若い人なら容貌や外観で判断するのもやむを得ないかもしれません。四十代、五十代ともなれば、自分で責任のとれる能力を養っていかなければならず、そのためには径に由らず大道を着実に歩んで努力していくことが大切です。

 横綱白鵬(33歳)はこの大相撲秋場所で、41度目の優勝(15度目の全勝優勝)を果たし、前人未到の幕内通算勝ち星1001勝を達成しました。「現役力士で一番稽古をしているのは自分」と言い切り、けがと付き合いながら鍛錬を怠らなかったからこその大業といえます。夏巡業中は階段の上り下りも難儀するほどだったようで、これまでに復帰できたのは、若いころから鍛え続けた身体能力の高さとたゆまぬ努力、入念な調整の賜物といえます。
個々の人生にせよスポーツ界にせよ、また企業の経営の世界にせよ、目先の利益ばかりにとらわれて、努力せず正しい道を踏み外してはならないのです。「速成は大成にはならず」夢に向かって、大道を正々堂々一歩一歩進んでいきたいものです。

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