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論語と経営(15)

(おのれ)()(れい)(かえ)るを(じん)()す』 (現代訳:己の私欲に打ち克って自我を没し、節度を守って礼にかえるのが仁を行う道(善政を行う道)である)

この言葉の後に、「仁を為すは己に()る。人に由らんや」(仁道を行おうと思えばいつでも行える。仁を行うのは自分自身であって、他人の力によるものではない)があって、自分自身に焦点を当てた主体性(「自分が源泉」)の道を説いています。
私欲は人間誰でも備わっている本能であり、通常これがなくては生きていけないものです。しかし私欲だけではより善く生きていけないのもまた古人の教えの通りです。己の私欲に打ち克って、節度を守って礼を行うことがより善く生きる道ということでしょう。

サッカーのワールドカップロシア大会で、合計4試合を戦った日本代表のロッカールームはすべて試合後に清掃され、礼節を保った「理想的な清潔な状態にあった」と報道されました。
ことに決勝トーナメントに進んで1回戦のベルギーとの試合においては、日本が2点先行したにも関わらずベルギーに3点取られ、逆転負けを喫しました。選手は悔しさのあまり、天を仰ぎかつ泣き崩れた光景はまだ我々の脳裏に残っています。それにもかかわらず、試合後は自分たちが使ったロッカールームに感謝して、キレイに清掃し、主催者のロシアにお返したのです。 これこそ勝負には負けましたが、己に克った好例と言えます。

勝負の世界では私欲と私欲の戦いであり、一方が勝って一方が負けることは必定当然のことです。
しかし勝っても負けても、そこに節度や礼がなければ永遠に己に克つことはできず、その瞬間だけの喜びや悲しみに終わってしまいます。そこに節度や礼があればこそ、その試合が永遠に生きていくと思うのです。柔道や剣道など道のつく競技はこうした理念の下に育まれてきたと思います。
講道館柔道の創始者嘉納治五郎の言葉に「精力善用 自他共栄」がありますが、これは身体を鍛錬して強健にし、精神の修養に努めて精力(心と体)の善用(最善の活用)を図って、人格の完成をめざしつつ社会に貢献することが人類全体の平和につながるということと理解されます。
技の修得はもとより心の修養が大切で、すべからく礼に始まり礼に終わる、これが人生の道として「克己心」につながるものと思います。

  • 高良 明
    創新グル-プ代表
    公認会計士 税理士
    税理士法人創新會計 代表社員

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