経営に役立つ情報

論語と経営(12)

『君子は(ふる)きを(たづ)ねて(あたら)しきを()れば、(もっ)()となるべし』
(現代訳:何事も過去をたどり、それを十分に消化して、それから未来に対する新しい思考や方法を見つけるべきだ、そうなれば学んだものが自分のものとなって人の師となることができる)

この言葉は「温故知新」として人口に膾炙(かいしゃ)しています。現在あるのは過去のおかげであって、過去なくして現在はありえません。過去の培われてきた歴史や足跡をたずねて、現在のもろもろのことに当てはめれば、有効な解答が得られることが期待されます。しかしながらそれだけに固執すると、時流に合った新しい世界は開けることは難しくなります。現在は日々未来に向かって変化しています。したがって新しきを考えていかないと人間の進歩はありえません。

また過去を無視して、ただ新しいものばかりにとらわれるのもまた、失敗のもとになります。「温故知新」は、過去と未来をつなげる人間生活の基本となり、進化発展の礎となる考え方です。基本や原理原則といった先人の知恵や不易を求めながら、新しきを創り出す工夫努力が必要になるのです。このように「温故知新」は「不易流行」につながる大変重要な言葉といえます。

近江商人は「温故知新」や「不易流行」の教えを基に商売を展開し事業の存続発展を図りました。「不易」とはいつの時代においても、変わらない、変えてはならない基本的なことであり、底流にある経営理念であります。また「流行」は日々変化している世の中において、変化を重ねていくものであり、革新を図っていくものであります。この不易と流行の一見相反する事柄をうまく調和していくところに事業存続のポイントがあるようです。

この「不易流行」は、松尾芭蕉が奥の細道をめぐって旅していた際に発した言葉で、伝統や古人を尊重しつつも、今までの古臭い風流の慣習を破り、新しい目で新鮮な情緒を発見し、これを具体的・具象的に表したとされています。また「許六離(きょりくり)(べつ)(ことば)」に「古人の跡をもとめず、古人の求めたる所をもとめよ」(古人の残した形骸を追わず、古人が求めようとしたものを追求せよ)という言葉を弘法大師の書から引用しており、古いなかに新しいものを求める温故知新が強調されています。われわれビジネスに携わる者においても、先人たちが求めた事業存続の秘訣、人間幸福の道を求め、現代の経営に応用していきたいものです。

  • 高良 明
    創新グル-プ代表
    公認会計士 税理士
    税理士法人創新會計 代表社員

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