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論語と経営(11)

『君子は(もと)(つと)む。(もと)()ちて道生ず。』
(現代訳:君子は何事につけても力を根本に用いる。根本が確立すれば道は自然に生ずるものである)

土台のない家は存在しないように、また根っこのない樹木も存在しないように、物事はすべからく基本や根本といわれる基礎から成り立っています。昔は学問の基礎を「読み書き算盤」と言って人間形成の基本としていました。千利休は「稽古とは 一より習い十を知り 十より帰るもとのその一」と茶道の基本心得を述べました。一に止まるという漢字を一字にすれば「正」という漢字になります。一から始まって完成の域に達した際に、また基本の一に戻って務めることが人生の正しい道なのでしょう。

論語でも基本や根本が大事だとして、道をよく知る者は必ず根本を理解し、根本を確立しさえすれば自ずから道は通ずると教えます。反対に根本を確立せずに成功や良い成果は期待することはできません。あるこんな喩え話があります。
「他人の家の三階づくりの高層が高くそびえて、美しいのを見てうらやましく思い、自分も金持ちなのだから高層の家を造ろうと思った。大工にたのんで建築を言いつけた。大工は承知して、まず基礎をつくり、二階を組み、それから三階へ進もうとした。主人はこれをみて、もどかしそうに叫んだ。『私の求めるのは土台ではない、一階でもない、二階でもない、三階の高楼だけだ。早くそれをつくれ』と。

愚かな者は、すべての物事は基本から成り立っていることを知らないで、また努め励むことを知らないで、ただ良い結果だけを求めようとします。土台なくして、一階、二階、三階はありえないように、努め励むことをしないでよい結果が得られるはずがありません。とかく一番大事なところ、土台や基礎、基本や根本は目に見えないものです。花や樹木にしても美しい部分は目に見えるものですが、それらを支えている根っこは土中に張って視界にはいりません。相田みつおさんの詩に「花を支える枝、枝を支える幹、幹を支える根、根はみえねんだなぁ」があります。人生の根本を教えるすばらしい詩です。

人生の根本は何か。自分の使命を自覚して地道に努力することだと思います。生きる意味を明らかにし、自身の命をどのように使うか、すなわち使命を自覚して、自分ならではの人生を歩むことが大切と思います。

  • 高良 明
    創新グル-プ代表
    公認会計士 税理士
    税理士法人創新會計 代表社員

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